
県内でも特に林業が盛んな久万高原町。気候や先代の人の丁寧な仕事のおかげで、木も健やかに育っているそう
実は林業もスゴいんです
愛媛県産のスギ&ヒノキ
愛媛県は「木」という資源がとても豊富。
かつてはヒノキの生産量が5年連続全国1位に輝き、現在も全国トップクラスの生産量を誇っています。また、スギの生産量も2011(平成23)年には全国10位となりました。
「媛(ひめ)すぎ」「媛(ひめ)ひのき」は、愛媛県産の木材の中でも厳しい品質基準をクリアしたものだけが掲げられるブランド材です。
これら高品質のブランド材は、どのように生産されているのでしょうか。
森林整備から原木の販売、木材の加工・販売までを手掛けている、久万(くま)広域森林組合を訪ねてみました。

整備前(右上)と整備後(右下)で日当たりは一目瞭然。こうすることで木が元気に育つ健康で災害にも強い山に。
良い木材は良い山から
森林整備ってこんな仕事
良い木材を生産するために欠かせないのが、山の手入れです。
放置された山は木の枝が重なり合い、一本一本が細長く、ひ弱な木となってしまいます。
おまけに林内の日当たりも悪く、下草が生えないことから、土が崩れやすくなって、災害の危険性も高まります。
そこで組合では、山の持ち主から相談を受けて健全な山づくりに向け、整備を行っています。
森林プロジェクト課の若手職員・山内さんも、その仕事を担う一人です。
まずは現地調査から。
山の「地番」が記された地図を頼りに歩いて、重機が通れる道を確保した後、整備に移ります。
余計な木や枝を切り落とすことで、山は健康で安全な環境になるのです。
「きれいになった山を見た山主さんから感謝されたとき、やりがいを感じます」と山内さんは語ってくれました。

樹齢何百年!のようなインパクトのある原木は、記念市などの特別な機会に登場するのだそうです。
目利きは人からも質を読む
奧が深~い原木の世界
次にやってきたのは原木市場。
翌日の市売りに備えて、スギとヒノキがたくさん並んでいました。
下見に来ているバイヤーさんの姿もちらほら。
原木の断面にはサイズを表す数字と、山主の番号が記されています。
目利きの方はこの山主番号を見て「あの人の山なら手入れが行き届いているから信頼できる」という風に、原木の質を見極めるうえでの、一つの材料にするのだそうです。
手入れと言っても、植林した木が十分に育つまでには35年以上かかります。
立派な木が採れる山だと認めてもらうまでに、山主さんも相当な努力を積み重ねてきたことでしょう。
原木の美しい年輪は、この木の成長に携わった人の、堅実な仕事ぶりを映し出しているかのようです。

木材の強度を調べるグレーディングマシン。機械を使うだけでなく、節や丸みなどは目視で見分けます。
厳しい条件を満たすエリート
それが媛すぎ・媛ひのき
原木は製材工場で加工されることで、さまざまな資材へと変身します。
皮を剥いで、工場全体に設置されたラインを通って、板状にカット。
その後、工場で出た木くずなどを燃料に、蒸気式の施設で乾燥させます。
このときにコンクリート製の重しを置くことで、木の曲がりなどを直します。
さらに「媛すぎ」「媛ひのき」を名乗るためには、主に次のような品質基準を満たさなければいけません。
・JAS規格2級以上
・含水率20%以下
・丸み無し
これらを満たしているスギやヒノキはつまり、木材ならではの「クセ」が抑えられ、より安心して使っていただける価値ある商品ということなのです。

「媛すぎ」「媛ひのき」は、愛媛の山と人によって育まれた、すばらしい資源です。
けれど一方で、自分が山を所有していることを知らなかったり、価値がないからという理由で手放したがる人も多いのだそうです。
「山の生産性は何十年という単位で見据えるものです。まずは目先の仕事をこなしていって、価値の高い木が育つ山にしていけたらと思います」
森林プロジェクト課の山内さんは、そう語ってくれました。
山を育むということは、時間をかけて自然と向き合うということでもあります。
愛媛に住んでいると、そこにあることが当たり前のように感じる山の風景ですが、愛情をかけて手入れがされている木々があって、この山並が維持されているのです。
木材となって様々な形で我々の生活を支えてくれている木を、未来に向けて守り育てていきたいですね。
暮らしにもっと木のぬくもりを

こんなモノまで作れちゃう!愛媛県産材の製品、続々開発中
愛媛県では県産材の活躍の場を広げるため、「新たな県産材利用促進事業」と称して、県内の企業からさまざまなアイデアを募集しています。
これまで誕生したのは、アクセサリーやスピーカー、新たな建材として注目されているCLTを使った遊具など。
どの製品にも木材への愛情と遊び心が満載です。
さらに県の林業政策課の職員証ホルダーも木製!(写真右下)
さすが、愛媛の木を推しているだけあります。
ここで紹介しているもの以外にも、愛媛県内では木を使った個性的な製品が販売されています。
木の製品は眺めても触っても心地よく、日常を豊かにしてくれること間違いなし。
みなさんもぜひ、暮らしに木のぬくもりを採り入れてみてください。
(2021年3月)
https://kuma-forest.jp
