
「東洋のマチュピチュ」と呼ばれる東平(とうなる)エリアにある貯鉱庫・選鉱場(写真:新居浜市所蔵)
山から島までロマンの宝庫
「東洋のマチュピチュ」も!
工業都市・新居浜市に「東洋のマチュピチュ」と言われる場所があるのをご存知ですか?
標高750mの山間に残る、1905(明治38)年ごろに建てられた別子銅山の施設跡です。その眺めは、まるで天空都市の遺跡のよう。別子銅山の最盛期には、この地域で約5000人もの人々が暮らしていたというのですから驚きです。
別子銅山は1691(元禄4)年から1973(昭和48)年まで283年にわたって採掘が行われていた、世界的にも有名な鉱山でした。「東洋のマチュピチュ」は、その歴史を物語る産業遺産の一つ。他にも、標高1,000m越えの山中から瀬戸内海の海上遥か20㎞の四阪島(しさかじま)に至るまで、産業遺産がいっぱい。それら「別子銅山近代化産業遺産群(近代化産業遺産群33(平成19年)経済産業省認定)」は、訪れる人たちをロマンあふれる物語の中へ連れていってくれる、人気の観光スポットになっています。
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登録有形文化財の「端出場(はでば)鉄橋」を渡る、「マイントピア別子」の観光列車(写真:新居浜市所蔵)
“本物”にこだわり、コツコツと
まちの歴史を次世代へ伝える
体験型テーマパーク「マイントピア別子」や、初代住友総理事 広瀬宰平の足跡と新居浜の生い立ちを学べる「旧広瀬邸・庭園」、煙害克服の歴史資料を展示する「日暮別邸(ひぐらしべってい)記念館」など、市内では別子銅山産業遺産が保存され、様々な形で活かされています。
古い建造物を残すということは、市民の協力や膨大なコストが必要になります。そんな大変なことをなぜ長年コツコツと続けているのでしょう?新居浜市役所 別子銅山文化遺産課に聞いてみました。
「工業都市・新居浜の礎である別子銅山の歴史を伝える本物を大事にしたいんです。銅山を支えた人々が遺した“まちを思う精神”が新居浜の人の心には生き続けています。市民意識が原動力なんですよ」。

山頂にレンガ造りの煙突が見えることから「煙突山」の名で親しまれる山を市民が整備
市民の活動によって
生まれ変わった「煙突山」
市民による整備活動も活発です。
2008年から活動を行っている「えんとつ山倶楽部」は、旧山根製錬所煙突が建つ山と周辺の清掃活動などの環境整備に取り組んでいます。活動が始まる前、「煙突山」の愛称で親しまれるその山は荒れ果てていたそう。
「誰もが安全に登れる里山にしたいということで始まった活動です。地域の方々にもご協力いただき、市と一緒に進めてきました」と同倶楽部の妻鳥俊彦さん。
えんとつ山倶楽部によって間伐や植樹が行われ、新しい登山道が造られました。所々に手作りの手すりやベンチ、標識が設置され、山頂は眺望抜群の広場に。登山客の姿が見られる美しい山に生まれ変わったのです。

道の駅マイントピア別子の対岸にある旧端出場水力発電所。一般公開に向け耐震補強等工事整備中。(写真:新居浜市所蔵、工事完成イメージパース)
2021年春に新事業スタート。
さらにまちの魅力がアップ
2021年4月から、新居浜市は煙突山ライトアップ事業をスタートします。このきっかけとなったのは、えんとつ山倶楽部のメンバーの一人が個人で行っていたライトアップです。「夜空に煙突山を美しく浮かび上がらせたい」と、2006年から一人で続けていたそう。なんと熱い思いでしょう。
数年かけて現在整備を進めている住友山田社宅のうち2棟は2021年3月末から限定公開を実施、旧端出場水力発電所は2022年以降に公開予定。市の産業遺産にまつわる事業の数々はパワフルに進行中です。
長年、産業遺産の保存・活用を支え続けている新居浜市民のパワー!すごいと思いませんか?
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(写真:新居浜市所蔵)
郷土の先人から学んだことが
100年後もまちを輝かせる
「昭和初期に住友別子鉱山の常務取締役に就任、別子銅山では最高責任者だった鷲尾勘解治(わしお かげじ)は、銅山がなくなった後の新居浜の繁栄を思い、銅山に代わる事業をおこすことや都市計画など『地方後栄策』を考えました。当時『作務(さむ)』と呼ぶボランティア活動によるまちづくりが行われ、現在も鷲尾勘解治の精神を継承し、自彊舎(じきょうしゃ)益友会という団体に受け継がれています。
また、『えんとつ山倶楽部』や産業遺産を案内するボランティアガイドなど、『作務』の精神が息づく活動が市民の中にいくつも見られるほか、市では、高校生対象の『別子銅山産業遺産創造塾』も開いています。新居浜の産業遺産について学び、まちづくりについて考える講座です。」と新居浜市 別子銅山文化遺産課。
まちを愛し、まちづくりに取り組む気持ちのバトンは若い人の手にしっかり渡されているのですね。
新居浜を、旅してみませんか?

1日では足りないから
リピート旅をお楽しみください。
工都・新居浜に散らばる別子銅山近代化産業遺産群を巡る旅をしてみませんか?
おすすめの1日観光コースをご提案。
まずは「マイントピア別子」へ。ジオラマで銅山の様子を再現した観光坑道を見学し、観光バス(※)で「東洋のマチュピチュ」と称される東平へ行くツアーに参加。(※最少人数運行条件あり。12月~2月冬季休み)
その後、「別子銅山記念館」で歴史を学び、国の重要文化財「旧広瀬邸(広瀬歴史記念館)」では国指定名勝の庭園も散策。
他にも魅力的な産業遺跡がたくさんあるので、新居浜市のホームページや観光パンフレットを参考にコースを考えてみてはいかがでしょうか。2021年3月末から限定公開される「住友山田社宅」、四阪島から移築した明治の洋風建築「日暮別邸記念館」なども要チェック。産業遺跡以外にも「あかがねミュージアム」や「みなとオアシスマリンパーク新居浜」など、新居浜巡りには魅力がいっぱいですよ。
(2021年3月)
