
柑橘王国えひめを支える
歴史ある大切な品種
愛媛県は柑橘の収穫量と品目数ともに日本一を誇る「柑橘王国」です。収穫量が最も多いのは温州みかんですが、次いで多く生産されているのが、この伊予柑(いよかん)。伊予柑の市場シェアのなんと約9割を愛媛県産が占めています。
伊予柑は、栽培の歴史が古く、長年のファンが多い柑橘。さわやかな風味と、ジューシーさ、甘味と酸味のバランスのよい味わいが特徴で、「柑橘らしさ」が満喫できると根強い人気を誇っています。ゼリーやジュース、ハイボール用シロップ、ピールなど加工品も多彩です。

収穫期には、山全体がオレンジ色に染まる!
庄屋の息子が苗木を育て
無料配付をして産地となる
伊予柑の栽培が愛媛県で始まったのは明治22年(1889年)。山口県萩市で明治19年(1986年)に発見された「穴門(あなど)蜜柑」の原木を、松山市の庄屋の息子、三好保徳(みよしやすのり)氏が購入して持ち帰ったのが始まりでした。
三好氏は苗木を接木して育て、近隣の農家には無償で配って栽培をすすめました。外観・香り・肉質がよく、その上、松山の気候風土に合っていたので栽培農家は増加。「伊予蜜柑」という名が付けられ、県外へも出荷されるようになりましたが、「伊予蜜柑」では“愛媛県産の温州みかん”と間違えられるということで、昭和5年(1930年)に「伊予柑(いよかん)」へと改名されました。

白く愛らしい伊予柑の花。毎年5月頃に開花します。
突然変異の「一枝」が
奇跡の実をつけた
明治時代から栽培されてきた、これら“普通伊予柑”のほかに、「宮内伊予柑」「大谷伊予柑」「勝山伊予柑」などの品種もあります。これらは「枝変わり※」と言われる突然変異によって生まれたもの。
(※枝葉や花、果実など植物の一部分だけが他の部分と違った性質になること)
今現在、伊予柑の生産の約9割を占める中心品種「宮内伊予柑」も、松山市平田町の宮内義正氏によって偶然発見されました。伊予柑の栽培に熱心に取り組み、枝一本、葉一枚までしっかり目を配っていたからこそ見つけ出せた、まさに“奇跡の一枝”。
「宮内伊予柑」は、“普通伊予柑”に比べて収穫量が多く、甘みも強いことから高値で取引されたそうで、この新品種の発見と育成が伊予柑の栽培を一気に広げることになりました。
その奇跡の実をつけた「宮内伊予柑」の母樹は、松山市の天然記念物に指定され、今も現役で実をつけています。

愛媛の宝物
「伊予柑」を守ろう
しかし、多様な品種の生産が進む中で、平成の中ごろ以降から伊予柑の生産量は年々減少しているそう。「柑橘王国・愛媛にとって大事な品種『伊予柑』を守り残さなければ!」そんな思いで、愛媛ではさまざまな取り組みが行われています。
たとえば、JAえひめ中央では、木の若返りで収穫量の向上を目指そうと、2018年からの4年間、伊予柑の苗木8万本を農家に無料配付。
また、優良な栽培園地で育った「宮内伊予柑」の特別商品を発案。一定基準以上の糖度と外観をもった伊予柑を手作業で選別し箱詰めした「蔵出しいよかん」と、3月上旬までじっくり熟成貯蔵した「弥生紅(やよいべに)」の2商品は、どちらも県外市場での評判が上々だそう。
最近は、甘みの強い品種に注目が集まっていますが、古い歴史を持ち、永く愛され続ける伊予柑のさわやかな味わいもぜひお試しください。

「柑橘王国えひめ」の次の時代を支える伊予柑の若い苗木たちも、すくすくと育っています。
伊予柑が運んでくるのは○○予感!?

いい予感しかしない!初春の縁起ものとしておすすめ
「1月14日」は何の日でしょう?
いち、いち、よん、、、もうお分かりですよね!そう、正解は「いよかんの日」。
伊予柑の旬の時期であることと、「1(い)4(よ)」の語呂合わせに由来して決定しました。1月14日またはその前後には伊予柑のPRイベントが行われ、道後温泉街に伊予柑を浮かべた足湯や、いよかんタワーなどが登場して盛り上がりを見せています!「伊予柑=いい予感」ということで、受験生に合格祈願の伊予柑をプレゼントする企画も好評です。さらなるゲン担ぎとして、伊予柑を五角形に成形し、受験生の合格とかけた「五格(ごうかく)いよかん」というものまであるんです! 伊予柑でビタミンCをたっぷり取って元気いっぱい!
目標をもって頑張るあの人へ、遠くにいる大切なあの人へ、春の訪れと一緒に「いい予感」を届ける伊予柑はいかがでしょうか?
(2021年2月)
