
魅力ある養豚業を未来へ。
おいしい豚肉を消費者へ。
「豚肉の脂身が苦手。でも、これなら食べられる」と言うファンも多い「愛媛甘とろ豚」。
口溶けのよい脂身が特徴で「36℃の口どけ」というフレーズで皆さまに親しまれています。
2009(平成21)年に誕生したこの銘柄豚を開発したのは、愛媛県畜産研究センターです。開発に際して目標としたのは試験データの数値だけではなく、「消費者がおいしいと納得してくれる高品質な豚肉」でした。そのために畜産研究センターは県民参加型の開発に取り組みました。
それは、試食アンケートを重ね、県民の意見を参考にするという方法でした。
愛媛県の豚の生産額は中四国地域No.1です。それなのに、なぜ銘柄豚が必要だったのでしょうか。当時、豚の価格は低迷しており、養豚農家の経営は大変厳しいものとなっていました。そこで「儲けることができる魅力のある養豚業」の実現をめざし銘柄豚づくりに挑戦したのです。

食べた人の意見を吸い上げる
試食アンケートを実施
まずは、「おいしいと感じる豚肉の理由」をアンケート調査。800名近くの回答結果を元に、ほどよくサシが入り、赤身はジューシーでやわらか、脂肪は口どけがよく臭みのない豚肉という具体的な目標を定めました。
主要品種の候補に上がったのは、昭和40年代まで国内養豚の約90%を占めていた中ヨークシャー種でした。「肉質は最高級」といわれていたものの肥育に時間がかかるため希少な存在となっていた品種です。一般豚との食べ比べアンケート調査を2回実施したところ、中ヨークシャー種がおいしいと答えた人が約60%を占め、お父さんとなる豚は中ヨークシャーに決まりました。

消費者が納得してくれる
おいしさと品質を追求
味の良さに加えて「儲かる」こともポイントですから、生産性やコストも重要。中ヨークシャー種の肥育に時間がかかるという短所をカバーできる母親豚を決めるために、5品種との組合せ試験を2年間行い、肉質、子どもを産む数、育成率などを調査。さらに、試食アンケートを実施し、総合点の最も高い組合せを選んだのです。
開発に取り組んだ研究員さんは「イベント会場での試食会やアンケート調査の協力をお願いする声がけに苦労しました。そういう経験がなかったので」と当時を振り返ります。研究員さん達は数えきれないほどの声がけを続け、県民参加型の開発をやり遂げたのです。

専用飼料の開発も行い、
味と品質の良さを極める。
豚肉の味は「品種半分、エサ半分」と言われるくらい、エサも大事。というわけで、畜産研究センターは、愛媛県産の裸麦を配合し、臭みの原因となる動物性油かすを使用しない専用飼料を開発しました。
現在5軒の農家が専用飼料を与え、飼育管理マニュアルや取扱要領に基づいて生産しています。「愛媛甘とろ豚」と名乗るためには、4項目の精肉用基準、5項目の品質基準を満たすことが求められています。
厳しい基準をクリアした「愛媛甘とろ豚」は、一般豚と比較すると、豚肉のおいしさの目安となるオレイン酸比率やジューシーさを示す保水力が高く、脂肪の口溶けを示す脂肪融点は36℃と低くなっており、そのデータ値も味のよさを物語っています。
なんと愛媛甘とろ豚にはテーマソングがあるんです。なぜテーマソングを作るに至ったのか?詳しくはこぼれ話へ
生産者×地元バンドが作った“愛ある”テーマソング

店頭に立つ生産者の松田さん
愛媛甘とろ豚が主役の、あま~いラブソング
愛媛甘とろ豚には、県内で活動するバンド「AQUBEE」が制作したテーマソングがあります。デパートなどでの試食販売を自らが行っていた生産者さんたちは、「テーマソングがあるといいのに」とずっと思っていたそうです。そんなある日、生産者の一人、松田養豚の松田浩さんがPRのためにラジオ番組に出演。その番組のパーソナリティが「AQUBEE」のボーカル担当のヒカルさんでした。この出会いからテーマソングが誕生。「歌詞に生産者の思いがちりばめられているし、曲に可愛く飛び跳ねる豚が表現されていて、とても気に入っています」と松田さん。裏テーマ「恋する乙女心」が込められているので、ぜひフルバージョンを聞いてみてください。
(2021年1月)
