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タルト

えひめのまじめ図鑑

タルト

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File 10

タルト

切り口の「の」の字を貫く
お殿様ゆかりの銘菓

#名産品 #観光 #お土産
タルト

愛媛のタルトはカステラと餡が絶妙。煎茶にもコーヒーにも合う和洋折衷の味

カステラで餡を巻いたお菓子
これが愛媛のタルトだ!

タルトと聞いて思い浮かべるのは、サクサクのタルト生地の上にクリームや果物が盛り付けられた洋菓子でしょう?ところが、愛媛では、タルトと言えば、しっとりとしたカステラ生地で餡を巻いたロールケーキ状のお菓子のこと。

タルトは、松山藩初代藩主・松平定行公が長崎で出会った南蛮菓子を気に入り、製法を詳しく調べ、それを参考に独自に考案したといわれています。松平家の家伝だった製法は明治時代に城下商家に伝えられ、今では大人気の愛媛土産です。

愛媛のタルトには守り続けているこだわりがあります。それは、切り口の「の」の字です。

タルト

愛媛にはタルトを製造・販売している菓子店がたくさんあります。「味さえよければ、切り口はどうでもいいだろう?」とか、「『の』はやめて個性を出したい」と考える所が一軒ぐらいはあってもよさそうですが…。

きっぱり言えます。どの店のタルトの切り口も「の」の字なのです。一切れタイプや季節限定商品を登場させるなど、時代に合わせて商品バリエーションを変えてきたお店はありますが、「の」の字は特徴として守り継がれています。しかも、この「の」の字は一本一本手巻きで作られているのです。

六時屋さんの手巻きの様子。

機械にはない優しさで
一本一本手巻きする

効率重視の機械化が進み、ロボット時代になりつつある今、本当に手巻きで作っているのでしょうか?確かめてみることにしました。

見学に行ったのは、1933(昭和8)年創業の六時屋さん。六時屋さんでは、巻きだけでなく、焼き上がったカステラを切るのも、餡を塗るのも手作業で行っていました。

巻き工程のコーナーでは、4人の職人さんがしゃもじで餡を塗り、すだれを使ってくるりと巻き上げています。10~20秒で巻き上げる、驚きの手早さです。

タルト

手早さと巻き終わりの「紙じめ」が、きれいな「の」の字をつくるポイントなのだそう。紙じめで力が入りすぎると、手の跡がついたり、形が崩れたりするとのこと。だから職人さんはそっと優しくタルトに接しながらしっかりしめます。

「生地も餡も柔らかいので機械ではできないんです。手巻きじゃないと『の』の字はできません。私は手巻きを習得するのに3カ月かかりました」と工場長さん。職人さんを育てる手間と手巻きの手間。その両方をかけて、藩主から教わったおいしさと「の」の字を守り続けているのです。

こぼれ話

比べたくなる!味と「の」の字

正統派から新顔まで個性豊かなラインナップ

「どのタルトがおすすめですか?」と県外の方に聞かれることがあります。正直、答えに困ります。お店ごとに味や食感に特徴があり、どれがよいかは好みの問題になるからです。さらに、栗やようかんが入ったもの、ひとくちサイズのもの、季節限定品など、愛媛のタルト界は華やかになっています。そこでおすすめしたいのが、食べ比べです。おすすめするからには自分も体験しておかねばと、道後温泉街でタルト散策を楽しんでみました。たくさんありました(写真は一部です)。味だけでなく、「の」の字もいろいろ。ぜひ、舌と目で愛媛のタルトをお確かめください。

(2020年12月)

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