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真珠

えひめのまじめ図鑑

真珠

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真珠

全国シェア1位でも
6割しか宝石になれない?

#産業技術 #伝統工芸 #農林水産
真珠

宇和海は穏やかで美しく、複雑に入り組んだリアス式海岸。その地形はまさに真珠の養殖に適した環境

美しく育つためには
愛と時間と手間が必要です

全国の約40%のシェアを占め、圧倒的な生産量を誇っている愛媛県の真珠。
1890(明治23)年に三重県で真珠養殖の試験が始まり、愛媛県では1907(明治40)年に御荘村(現在の愛南町)の小西左金吾氏が事業をスタートさせたのが始まりといわれています。昭和に入ると愛媛県の真珠養殖が勢いを増し、宇和海の真珠が名声を得てきました。真珠生産に携わる漁業者たちが品質向上や技術革新の努力を重ね、漁協を中心に官民が一体になって協力し、1978(昭和53)年に初めて三重県を抜いて日本一に。その後、三重県、長崎県と競い合いながらも、2009(平成21)年からは10年連続で生産量全国1位の座を守っています。

真珠

ドブ貝という貝殻を使って作られる真珠の核。非常に技術を要する作業で一人前になるには数年かかるそう。

愛媛県の真珠の魅力を探るために、真珠養殖体験ツアーに参加。真珠ができるまでの行程を丁寧に教えてもらいました。
真珠の養殖は4月〜7月にかけて、アコヤ貝に核を入れる「核入れ」から始まりますが、その前に大切なのが「抑制」という作業。「核入れ」の作業を手術に例えると、「抑制」は麻酔のようなもの。抑制カゴと呼ばれるカゴの中にアコヤ貝を入れ、酸欠に近い状態にすることで、「核入れ」の作業時のショックを少なくし、その後の回復を早めるのだそうです。
「核入れ」の後は、陸に近い穏やかな海にアコヤ貝を戻し、貝の体力が回復するまで「養生」を約1月間。手術後は、ゆっくりと体を休めるイメージですね。

真珠

ツアーでは、貝から真珠を取り出す「玉出し」の体験も。真珠は、そのままお土産として持ち帰れます。

その後、沖にあるいかだに吊るして「本養殖」が12月頃まで続きます。
しかし、沖に戻すと一安心・・・ではありません!海に戻された貝にはフジツボや海藻類が付着します。これらの付着物は貝の成長や真珠の巻きを妨げるため、10日〜2週間に1度の間隔で、海に戻した貝を引き上げ、なんともマメに貝の掃除をしなくてはならないのです。機械で貝掃除を行う場合もあれば、汚れがひどい貝は、手で丁寧に付着物を取り除きます。
12月〜翌年の1月にかけてようやく、貝の中から真珠を取り出す「玉出し」に取り掛かります。水温が下がることで真珠層が引き締まり、真珠に強い輝きが生まれるため、玉出しを行うのは手もかじかむ寒い冬。大変な作業です。

真珠

真珠が宝石になれるか
なれないか、ここからが勝負

しかし、アコヤ貝から真珠を取り出してもまだ終わりではありません。ここから、ひとつひとつ品質を確かめ選別し、その後、不純物の除去などの加工を行うことで、真珠は宝石になっていくのです。
良い真珠の最も重要な要素が、真珠層の厚さを表す「巻き」と「光沢」。どれも美しく見える真珠のネックレス(上の写真)ですが、左端の真珠は商品としては通用しないのだとか。一番高価なのは右端。真ん中の真珠は100,000円、右端は200,000円と、値段の差は2倍。その差はやはり真珠の「巻き」と「光沢」なのです。
また、「巻き」や「光沢」が良いと、真円でなくても歪みが魅力と個性を生むバロック真珠として通好みな商品になります。

真珠

ひとつひとつ品質を確かめながら、丁寧に選別します。

体験ツアーでは、良い真珠の見分け方や、本物とイミテーション真珠との違いも教えていただきました。擦りあわせた時につるつるなのが偽物だそうです。

こちらの真珠養殖業者さんでは年間約3〜4万個の真珠を生産していますが、商品として宝石になるのはなんと約6割だけ!残りの4割は商品になることが許されません。これほどまでに厳しい選別と徹底した品質管理のもと、愛媛県の真珠の美しさが保たれているのですね。

(取材協力:有限会社 土居真珠)

こぼれ話

知られざる真珠のおいしい副産物

真珠だけではない!アコヤ貝の貝柱は高級食材?!

宝石の真珠はもちろん高価なものですが、玉出しの時期だけ食べられるアコヤ貝の貝柱は、実は高級食材。1kg約5,000円の値がつくことも。真珠の玉出しは地域の人や他の真珠養殖場の人たちと協力し合い、2日程度で一気に作業をします。宇和島市の三浦という地域では、これを「助け合い」と呼びます。なんと、真珠養殖をしていない近所の人も手伝いに駆けつけるのだとか!その時のお礼として貝柱を振舞うことも多く、そういった意味でもなかなか流通しない貝柱。地元の人たちはお刺身やフライ、串焼きにして食べるそう。この助け合いの精神の話を聞いた後は、アコヤ貝の貝柱がもっとおいしく感じられるかもしれません。道の駅などで見かけたときは買い!ですよ。

(2020年10月)

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