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俳句甲子園

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俳句甲子園

常識なんて打ち破れ
五七五のその先へ

#教育・文化
俳句甲子園

若者×俳句のコラボで
巻き起こせムーブメント

毎年8月に開催される、全国高等学校俳句選手権大会、通称「俳句甲子園」。
愛媛県松山市で開催されているこの大会、23回目となる2020(令和2)年は初の試みとなるリモート形式で行われました。
1998(平成10)年にスタートして以来、規模をどんどん拡大し、今や他のスポーツ競技と並ぶ存在となった俳句甲子園ですが、そこに至るまでにどのような歴史を歩んできたのでしょうか。主催しているNPO法人俳句甲子園実行委員会に、お話を伺ってきました。

俳句甲子園

2020年は初となるリモート形式で開催

俳句甲子園の前身は、公益社団法人松山青年会議所が1976(昭和51)年から開催していた「句碑めぐり」です。
小学生が地域の風土・歴史を学ぶためのこの事業、21年間も続いたのですが、青年会議所は悩んでいました。
「似たような事業はよそでも開催されているし、せっかくなら青年会議所ならではの新しい事業をやりたい!」
一方、同じように思案する方たちがいました。俳句の魅力を広めるべく活動していた、月刊新聞「子規新報(しきしんぽう)」の関係者です。
「対戦形式で俳句を詠む」という、現在の俳句甲子園の核となる構想を温めていた彼らと、新事業をやりたい青年会議所。運命的な出会いを果たした両者の思いは、見事に一つになったのでした。

俳句甲子園

とはいえ、新しい試みには苦労がつきもの。高校生が戦うというスタイルは、それまでの俳句の世界ではなかなか受け入れてもらえませんでした。人員と費用を懸命に集め、なんとか開催できた第1回大会は、とてもささやかなものだったそうです。
しかし!愛媛・松山は正岡子規などの有名な俳人を輩出した、俳句の聖地です。
各方面からのサポートで、大会は回数を重ねるごとに規模を拡大。実行委員会は2007(平成19)年にNPO法人化し、主役である高校生たちもコツコツと鍛錬を積んで、多くのすばらしい句が生み出されました。
今や俳句甲子園出場を見据えて進学先を決める学生や、出場実績を武器に大学受験に挑む学生もいるほどだそうです。

俳句甲子園

運営はすべて有志のボランティア。かつての出場者もOBOG会のメンバーとして大会をサポートしています。

イケないことをしたいから
あえて俳句は詠みません

ところで、これだけハイレベルな大会を運営しているだけあって、やはり実行委員会のみなさんも俳句をたしなまれるのでしょうか?
事務局長の岡本さんによると、今でこそ俳句を詠む人は増えたけれど、基本的な考え方は「俳句甲子園は俳句をやらない人が運営するから面白い」なのだそうです。
俳句をやらないからこそ、俳句の世界のルールに縛られず、斬新なことができる…。そのため岡本さん自身が運営に携わっている間は、俳句はやらないと決めているのだとか。これも一つの美学ですね。

若者が人生を賭けるほどの大きな船となった俳句甲子園ですが、実行委員会の当初からの思いは「俳句に親しむ人が増えてほしい。気軽に参加してほしい」ということです。
そしてとにかく、俳句甲子園を続けていくのが目標とのこと。
「続けていくといろんな意見が出てくるでしょう。今年も変わらないとか、進歩がない、なんて言われるかもしれません。それでも続けることが大事なんです」
まさに継続は力なり、ですね。今後も俳句甲子園から、ますます目が離せません。

こぼれ話

大切なのは戦闘力ではなく鑑賞力

相手の句にツッコミを入れちゃう「ディベート」の意義とは

俳句甲子園の最大の見どころであるディベート。そもそも俳句に正解なんてないのに、互いの句の細部に理路整然としたことばを投げかけることに「それってアリなの?」という声も挙がっているようです。
しかし、ディベートで真に求められるのは鑑賞力。粗探しではなく、相手チームの句をより深く味わうことを目的としているのです。
そして一番大切なことを聞くことができました。「けなすようなディベートをするチームは勝てない傾向にある」そうです。
もっとも初期の大会では攻撃的なことばをぶつけ、相手チームがシュンとしてしまう場面もあったそうですが、それもまた、若さがぶつかる俳句甲子園ならではの魅力なのかもしれません。

(2020年12月)

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